光文社新書「発達傷害かもしれない」

今日はこどもの日。2005/02/08の日記に書いた特別支援教育にも関連する新刊を読んだ。
発達障害かもしれない 見た目は普通の、ちょっと変わった子 (光文社新書)

プロローグに,“彼らは五感が私たちより鋭敏であり,私たちには思いもつかないような発想が垣間見られたり,私たちが到底及ばないような能力を発揮することもあるのです”とあることに,多くの患者に接してきた著者独自の発達傷害に対する識見が感じられる。
第六章『軽度発達障害の実際のケース』の患者さん本人や家族による文章が有り難い。世界の見え方が違う立場からの素直な分析で,周囲の人間の方が想像力が欠落しているように見えてしまう場面が多々描かれている。
また,第二章『自閉症高機能自閉症の基礎知識』の最後には自閉症児の増加について,“あくまで私見ですが,環境ホルモン食品添加物による影響も少なからずあるのでは”という記述があり,この点は私自身も懸念していることなので(そうではないことを願いつつ),今後の研究進展が待たれるところである。
以下の図は以前別の書籍でも同様なものがあったが,この問題の複雑さと難しさが示されている。地元の新潟県特別支援教育に対する取り組み方も注目していきたい。


磯部潮「発達障害かもしれない」p.11より作成
ADHD薬(要・Chimeインストール)にも図を掲載

山田昌弘さんの「希望格差社会」

自らの課題図書にしていた,
希望格差社会―「負け組」の絶望感が日本を引き裂く

をようやく取り寄せて読む。“格差社会”という注目のキーワードを読み解くのに必要な図表や文献が多数出ていて大いに助かる。
はしがきにある,日本社会は,将来希望がもてる人と絶望している人に分裂していくプロセスに入っているのではないか”という表現にすべて集約されるだろう。このことが7章『教育の不安定化』や8章『希望の喪失』にあるように教育問題にも深くリンクしていることは,

で引用した宮台真司さんの“「みなさんが社会だと思っているもの=学校的な諸事物」からの「退却」”という指摘とも通ずるものがある。
また格差社会については先月,

でも取り上げられていたが,2005/04/21の「半島を出よ」を書いた村上龍さんも,一昨日朝のスーパーモーニングでの鳥越さんとの対談において,すでに始まっている格差社会という現実をきちんと国民に説明しなければ大変なことになるというような話をしていた。
なお,村上さんは同番組だけでなく,先日記したようにNHK総合TV「スタジオパーク」に出演したほか,今夜もこれから報道STATIONに出演するようである。
もはや回避できない新しい枠組みを,どうやって受け入れていくべきなのだろう。