コプラナーPXBによる母乳汚染とベンゼン環から見る生命の世界

昨日は,

の要旨締め切り。『ウェブ上での環境情報・危機情報発信の実践について』という演題で発表するのだけれど,最近の化学物質による問題としてあげたの一つが以下の記事。


考え得るコプラナーPXBの例;Chime分子
ダイオキシン類のTEFのコプラナーPCB例3,3',4,4',5,5'-HxCBの6個の塩素のうち3個を臭素に置換したもの)


PCBにしろPXBにしろ難分解性の有機ハロゲン化合物の問題になるが,コプラナー(共平面)ということで大事なのはベンゼン環の存在。たまたま,2007/09/02で紹介した雑誌に以下のような貴重な解説が載っていた。

そもそも私自身が化学物質の有害性の上で分子の形との関係で関心を持った最初がプラナーPCBであり,発がん性のあるベンゼンという構造要素が例えばアミノ酸の中に含まれていることについて疑問を持ってきたのだが,この解説でそれが氷解した思いである。
p.989「動物のフェニル基は植物に依存している」には,“後述の唯一の例外を除いて芳香環を生合成できない動物はフェニル基を植物から摂取している”とあり,その最大の供給源が必須アミノ酸に含まれているフェニルアラニンチロシン(とトリプトファン)なのである。


芳香族アミノ酸PheTyrTrp
タンパク質中の20種類のアミノ酸参照

そして,自作Jmolコンテンツでタンパク質を含むコンテンツについては,酸性中性芳香族〉・塩基性アミノ酸区別の色分けを可能にしているのだが,その機能が同解説を読む上でも有用になることがわかった。
その例として,p.989「環境を見渡したとき」で語られている微生物による芳香族化合物の分解と関係するPCBの生分解反応(バイオレメディエーション;bioremediation)について作成したのが以下の画像である。

PDB 1LKDのリガンド周辺部の酸性中性芳香族〉・塩基性区別とamino色表示のアニメーション
詳細はバイオレメディエーションとファイトレメディエーション参照

また,前後するが上記の“後述の唯一の例外”であるp.988図3のエストラジオール生合成,あるいは同「ベンゼン環の代謝と毒性発現」で語られている代謝による“解毒”(一般に疎水性のものは親水性にして体外に排出)などで重要な働きをしているのがシトクロムP450であり,それについては以下のページを参照していただきたい。


テストステロン(上)と17β-エストラジオール(下;緑色の丸がP450の仲間のアロマターゼにより生成されるベンゼン環)
ステロイドホルモンの生合成と代謝参照


P450データ集メニューP450部分データ集

これまで,分子の毒性や生体分子の働きに興味をもっていろいろ作り続けてきたコンテンツ群が,青木氏の意欲的な解説によって繋がったのが何よりありがたい。
合成化学物質が生物の世界に及ぼす影響について,このような広い視野で統括的に見ることはとても重要なことだと考える。