こども達への化学物質の影響に関する研究の最新情報
昨日のエントリーの本と一緒に買ってきたのが以下の本。3月号なので今まで見落としていたことになる。
- Biophilia,2008年3月(春)号(特集:「環境遺伝子」研究の最前線 ─環境汚染と健康、人類の未来は大丈夫?─),丸善
- 木村博承,『化学物質の内分泌かく乱作用に関する環境省の取り組み ―総合戦略ExTEND2005の推進―』
- 井上達,『総論 内分泌かく乱化学物質研究の世界的動向』*1 ※参考:文献 7) へのリンク:Associated Project Details for Research Category: Children's Health (US EPA)
- 井口泰泉・中村武志,『内分泌かく乱物質が及ぼす発生、成長への影響』
- 岩田久人・金恩英,『ダイオキシン類の環境汚染に伴う野生生物への影響 ―野生生物におけるAHR-CYP1Aシグナル伝達系の種多様性―』
- 寺岡宏樹,『ゼブラフィッシュで観たダイオキシン毒性発現のメカニズム』
- 鯉淵典之・岩崎俊晴,『ポリ塩化ビフェニルによる器官の発達、機能維持への影響 ―甲状腺ホルモンを介するPCB類の作用機構―』
- 西村典子,『母体へのダイオキシン曝露が新生児に影響をもたらすメカニズム』
井上さんによる総論の図7のタイトル“低用量問題と胎生期”に象徴されるように,形態形成期にある胎児への化学物質の影響が特集のメインテーマになっている。
p.12図7掲載の本(国連)
※参考:Googleによる“胎生期ウィンドウ OR 胎生期ウインドウ”検索結果
2007/11/16に記した,
- 国際シンポジウム「化学物質の内分泌かく乱作用について 〜10年間のあゆみ〜」(2007/12/09-10,さいたま市・大宮ソニックシティ) ※井上さん(基調講演),井口さん(パネリスト)も参加
の中でも化学物質の内分泌かく乱作用の研究方法の確立自体がまだ途上にあることが語られていたが(欧州のREACHなど),次々と新しい知見が得られていると同時にまだまだわかっていないことは多いと言える。特に途上国における高濃度の化学物質汚染とその地球規模での拡散が気にかかる。
同誌掲載の解説に直接関係しないが,RCSB PDBで久々にPCB関連の分子を含むデータを探したところ,上掲書p.28にも出てくる水酸化PCB例(3,5,3',5'-tetrachloro-biphenyl-4,4'-diol)を含むデータがあったので以下の紹介する。
水酸化PCBを含むエストロゲンスルホトランスフェラーゼの例1G3M
※トップのアニメ画像はPDBsumのデータより作成(水酸化PCBのSITE部分)
※参考:バイオレメディエーションとファイトレメディエーション
ここで話が変わるが,
に載っている
を読んだところ,次号から福岡伸一さんのエッセーが連載されるとのこと。生体内における化合物のフローという視点で,人工化学物質の問題を考える上でも貴重な読み物になることを期待したい。
*1:記事中のビスフェノールAについては2007/12/16のエントリーおよび以下を参照。
・ビスフェノールAが結合したエストロゲン受容体γ(生活環境化学の部屋)