人体に入るべきでない分子(追記あり)

1008/09/08に記した“事故米”のメタミドホスアフラトキシンアセタミプリドに続き,食品中のメラミン混入が世界規模で大きな問題になっている。


新「動く分子事典」DVD収録のメラミン分子
ベンゼンのとびとびの3つの炭素が窒素に代わったトリアジン環の残った炭素3つにアミノ基が結合


同書p.195掲載のメラミン樹脂(代表的な高分子で分子モデル参照可)

PDBsumサイト収録の生体高分子には天然低分子に加えて薬剤などの合成分子が含まれているものも数多くあるだけでなく,ベンゼン*1メチル水銀*2メタミドホスビスフェノールA*3と言った有害な人工化学物質を含むものもあるのだが,現55,435データ中でメラミンを含むものは無く,その見るからに反応性が高そうな分子構造と相まって生体内に入るべき物質でないという印象を強く与えられた。それを人為的に摂取させられているという現実に,化学物質汚染の原点の1つである水俣病も解決されずその経験も活かされていない中で,人間が築いてきた食の世界の中でどういう意味を持つのだろうかと考えさせられる。

PDBsumサイトでの“melamine”検索結果の画面

こども達への影響も大きく,本ブログでは環境汚染問題等から地球上でも宇宙服を身につけなければならなくありつつあることを述べているが,そこにおいて必要な安全のための分析機器が増える一方であるように見える。それは例えば,火星という異なる惑星で分析を続けているTEGAなどを進歩させたようなものになるだろうか。


このような食の問題については,
生命と食 (岩波ブックレット)

のp.46〜『食の安全をどう考えるか』を読んで首肯するところが多い。p.52にはBSEを例に,

    狂牛病は人災の連鎖としてここに至っているもので、それは予見もできるし、回避もできるはずのものです”
とある。食の意味を未だ正しく理解できず,あるいは上記のように故意に誤った行動をしてしまうということに対して,本当にどう立ち向かっていけばいいのだろう。
ところで,メラミンそのものを含む生体高分子構造データはないが,その骨格のトリアジン環を有する化合物を含むものは少なからずあり,以下はその例の除草剤アトラジン*4を含んでいるデータである。

アトラジンを含むPDBsumデータ例5prc
PDBsumのLigand-SITE情報データ集で作成

図のアミノ酸残基の着色は,今週末の日本コンピュータ化学会2008年秋季年会での発表向けに,有機概念図有機性(O)・無機性(I)の比I/Oの大小順によるもので,つい数日前に付け加えた機能である。
この有機概念図については,2008/09/07に記したようにサイエンスアゴラ2008(2008/11/22-24,国際研究交流大学村)でもグループで行う企画の中で取り上げる予定なのだが,一昨日その企画の実施日と会場が決まったという連絡が事務局から届いた。今年は昨年より広い会場で,力が入る。もちろん食の問題にも触れるつもりである。


*1:2008/07/25の記事参照

*2:例えば,2007/09/232008/06/21参照

*3:環境ホルモン学会ニュースレター Vol.11 No.1の『研究最前線』はビスフェノールAの研究を網羅している。

*4:環境ホルモンとして疑われている化合物例に掲載。