使い走りあるいは細い横糸としての男

ecochem2008-12-14

福岡伸一さん*1の新刊をようやく読み終えた。
できそこないの男たち (光文社新書)

相変わらずのご自分の経験を踏まえたストーリー性のある語り口に魅了されつつ,これは生体分子や生命のしくみのどの領域に関係することかと推理しながら読ませていただいた。
男性には挑発的なタイトルだが,著者が福岡さんなので生物学・生命科学をかじっている人にはY染色体やSRY遺伝子がすぐ思い浮かぶだろう。本ブログでは以下のエントリーが該当するけれど,それにしても発生の妙にはいつもながら圧倒されてしまう。

読了記念に生体分子を1つサイトにアップした。SRYに絡んでp.155に書かれているWT-1(WT1; Wilms tumor 1または Wilms' tumor 1)*2関連PDBデータ例である。


WT-1(WT1)結合DNA構造例2jp9のModel 1;Znフィンガーを含む(がZn)
Jmolで見るトピックス分子で3Dモデル参照可

また,p.205以降で書かれている“SRY遺伝子のもっとも忠実なしもべ”であり,横糸の弱さの原因とも目しているテストステロンについての記述を読みながら,以下のエントリーに記したテストステロンに含まれるベンゼン環のことを思い起こした。生体分子の世界の不思議さを勉強している身として,多くの刺激をいただいた1冊である。

*1:本ブログでは,2005/02/27(“動的平衡”について;冒頭のアニメ画像はその再掲)や2005/12/02プリオン関連),2007/09/30(「生物と無生物のあいだ」について;新聞広告で名前が並んだことも紹介)など何回か著書等について言及させてもらっている。

*2:SRYWilms' tumorも英語版Wikipediaには記事があるのに日本語版にはない。