埋設農薬,POPs,塩素の花
記事中のアルドリン,ディルドリン,エンドリン,BHC,DDTはすべて有機塩素系農薬で,画像はその仲間の分子で作成した“塩素の花”。
緑色が塩素原子で,このような塩素系有機化合物は天然ではほとんど生成せず,人間が大量に生産して環境中に排出したために,分解しにくいこともあって生物の世界に悪影響を及ぼし続けているのである。
有機塩素系化合物やPOPsのことも含めて,埋設農薬については以下で取り上げている。
- 埋設農薬の実態調査結果について(農林水産省が2001年12月に発表したデータより作成)
- 2000年・POPs(残留性有機汚染物質)廃絶12化合物(要・Chimeインストール)
- 農薬事典(要・Chimeインストール)
下図はそこで掲載したもの。
記事中の元大阪大学助教授の植村振作先生は農薬の危険性を詳しく教えてくれる本をたくさん出版してくれており,次の本の農薬関連リンク集(pp.507-509)には上の農薬事典が掲載されている(旧URL)。
なお,PCBやポリ塩化ビニルなども含めて,有機塩素化合物が大量に生産されれるようになった背景については以下の本などに詳しい。
アスベストなども含めて有害物質の問題は,マスコミなどで話題になって対応がとられたかのように見えても決して監視の目を離してはならないと考えている。
そのことは,2005/11/20に書いたSTS学会第4回年次研究大会の講演でも強く再認識した。元素で言えばこちらは塩素ClでなくスズSnである。
- 堀口敏宏(国立環境研究所),『化学物質規制政策』(【WS】世紀転換期日本の環境政策の変化の歴史的検証)
- 発表内容の一部:国立環境研究所「環境儀」17号『有機スズと生殖異常 海産巻貝に及ぼす内分泌かく乱化学物質の影響』
- “RXRと環境ホルモン”については以下に掲載:環境ホルモン情報
- 有機スズ化合物について:環境ホルモンとされる有機スズ化合物/TBT,TPT(要・Chimeインストール)
- 発表内容の一部:国立環境研究所「環境儀」17号『有機スズと生殖異常 海産巻貝に及ぼす内分泌かく乱化学物質の影響』
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※追記(2005/11/25,11/26加筆):ClとSn,Pがサンゴ礁の生態に悪影響を及ぼすというニュース
- サンゴに影響を及ぼす化学物質のリスク <暴露試験で生育の阻害を確認 代替船底塗料も>(WWFジャパン,2005/11/24)
- 化学物質がサンゴに悪影響 東大など実証実験(京都新聞,2005/11/25)
- 東京大学・渡辺俊樹助教授らによる船底塗料TBT,農薬のジウロン(DCMU;下図)とジクロルボス(DDVP;有機リン系でClも含む)などの影響の研究
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※追記(2005/11/26):“TBTの使用禁止”について
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TBT・TPT
TBTは有機スズ化合物。そのうち、一般によく知られているのは酸化トリブチルスズTBTO。船底、漁網などにイガイ類、フジツボ類、海藻などが付着するのを防ぐ船底・漁網防汚剤。TBTOは1990年1月に化審法による第一種特定化学物質に指定され、製造、輸入、使用が禁止されています。研究では13種類(第二種特定化学物質)あるTBTO以外のトリブチルスズ化合物のうち塩化トリブチルスズを使いました。化学式は(C4H9)3SnCl(構造式は図a)。
TPTは同じく有機スズ化合物で、7種類あり、すべて1990年1月に第二種特定化学物質に指定され、現在は防汚剤としては使用されていません。研究では塩化トリフェニルスズ(C6H5)3SnClを使いました(構造式は図b)。