「水俣病の科学 増補版」の刊行

ほかで紹介した,「水俣病の科学」の増補版が発刊された。同記事の写真に一緒に写っている『現代化学』に掲載された新潟水俣病の原因が昭和電工鹿瀬工場の廃液であるとする論文が補論として追加された。
水俣病の科学

p.337〜の『増補版へのあとがき』で,増補版の前に先立つ「水俣病の科学」が出版されてからの5年間,チッソは同書を無視していること,また『現代化学』論文に対しても3年間昭和電工から反論がなかったことが記されている。後者については,以下のような記述があってその解明に困難を極めたこと,昭和電工自体も西村補論に対する反証は自業自得で基本的に不可能であることが理解できる。

    昭和電工は,一九六五年,新潟で水俣病が発見された正式発表後ただちに製造プラント解体撤去し,同時に全資料を焼却してしまったからです。”
水俣病公式確認50年の今年,症状が悪化している胎児性水俣病患者の映像などが再三テレビで報じられた。その苦しみに対して責任企業と行政と社会(わたし達ひとりひとり)がどう向き合うべきなのか,p.327の結語の最後の一文をもう一度かみしめたい。
    “「私たちもまた加害者ではなかったのか? そしてあなたも」。”