リプロダクティブヘルスと今夜の番組「男と女の不思議に迫る」

ecochem2007-02-03

厚生労働相の発言が問題になり,ブログ検索などでもトップの話題になっったりしている。このような発言を読むたびに,いつも思い出すことがいくつかある。
まず第一は,

  • 遠山 啓,「古典との再会 文学・学問・科学」,太郎次郎社(1980)

に書かれている,ルソーの教育論「エミール」には女性蔑視的な記述があるということであり,遠山さんは200年前のことだからと書いているが,女性に対するそのような見方が変わるにはあと数百年かかるのではないかと絶望的になることである。
それでは太古からそうなのかと言えば,ギリシャ神話に登場する女神デーメーテールデメテル)は神号デーに母を意味するメーテールがつながったもので豊穣を約束する大地母神を意味すると考えられているなど,多くの地域で女性に対する敬いの思想があった証拠は無数にあるに違いない。例えばトップ画像(学生時代に参加していた同人誌に描いた表紙より)に示した遮光器土偶などもその表れとされる。
これを現代風に言えばリプロダクティブ・ヘルス/ライツ*1で主張されると同時に否定もされる『産む性』という考え方であろう。決して『機械』などであるはずはない。
さらに,『性』は生命科学にとっても大きなテーマの一つであり,ちょうど今夜のテレビ番組でも取り上げられた。

そして同じ時間から放送された,

を見ても,こどもを産むという大事業とその後に控えている多くの困難を改めて思い知らされる。
また,
性を決めるXとY―性染色体と「男と女のサイエンス」 (ニュートンムック)

にもその最新の研究成果が多数解説されており,『男性』をつくり上げるY染色体には遺伝子が78個しかなく(X染色体には1098個),1000万年後には失われてしまうかもしれないという記述(p.64)まである!
加うるに,性同一性障害のことを考えれば最近は『性』という見方自体が古いと考え方もあり,同障害においては人間の環境汚染が関わっている可能性も指摘されている。そのことを厚生労働省には忘れて欲しくない。国や自治体の責任も大きい新潟水俣病においては産児制限という暴挙が『産む権利』を抹殺した例があることも。
今回の発言は,奇跡的にこの地球上に産まれ出た『生命』と,その中から永い時間をかけて人間という種が創り出した文化の一端を担う『機械』という存在の双方にとって冒涜以外の何ものでもない。

*1:例えば,「リプロダクティブ・ヘルスと環境 共に生きる世界へ」(上野千鶴子・綿貫礼子 編著)」参照;ここでは男性も『産む性』とする記述がある