中性子回折で求められたPDB構造データ(生体分子中の水素・重水素を見る)

ecochem2008-03-02

RCSB PDBの最新ニュースに,

が出ており,2008/02/26時点の登録構造データ数は49,192と間もなく50,000件に達する。
「生活環境化学の部屋」の分子データ集で取り上げているPDBデータのほとんどはX線回折とNMRによるもので,測定方法の特性により前者では水素原子の位置が示されておらず後者(自作コンテンツの大多数ではModel 1を抽出)では水素原子も表示される。
その水素原子の表示という意味では中性子回折法も注目されており,先日届いた雑誌に以下の解説記事が掲載されていた。


解説著者らによる中性子解析によるPDBデータ例1iu6
重水素を水色にして強調;未置換の水素は白)
※トップのアニメも同データで,Jmolでは重水素は薄い黄色で表示


X線回折中性子回折の比較(水素・重水素の観測にしやすさを含む)のほか,タンパク質結晶を重水溶液に浸漬して水素を重水素に置換してより観測しやすくすること,それにより水和水の水素結合の確認ができること(水素結合していない水分子は重水素の位置が特定できない)など,わかりやすく説明されている。
RCSB PDBにおいて“NEUTRON DIFFRACTION”で検索すると中性子回折によるデータを見つけることができ,以下はそれで見つけたDNAの例である。


中性子回折で求めたB-DNA構造例1wqz重水素,水素は白色)