横田めぐみさんのこと

横田めぐみさんが新潟の海岸から拉致されたのは,1977年11月15日。いろいろな意味で長い暗黒の時間であった27年目の昨日,また真偽の不明なニュースが報じられた。
拉致された新潟の海岸は,中学・高校の頃,水泳部には負けるけれど水が温んでくるとよく浸かっていた縄張りだし,学生の時も新潟に戻るとたまに自転車で夜の海を見に行ったりしていて,そんな間近で個人の人生を踏み躙る組織的な悪意が蠢いていたことに慄然とする。そう,海の親しんでいた誰にでも起こりうることだったわけで,まず自分自身のこととして考えなければ(想像できることは事実に比べれば限界があるにしても),と思う。
また,2年前たまたま用事があって海岸に近いレストランで昼食をとっていた際,近くのテーブルに見たことのある方々が食事をしていて,「どこでお会いしたんだろう」と思っていたがめぐみさんのご両親であることに気付いた。現場に程近い海の見える場所だったので,どんなお気持ちで海を眺めていらっしゃったのかを考えると,本当にいたたまれない思いだった。
報道のたびに使われる写真で,めぐみさんの顔を知らない人はいないだろう。さわやかな人柄が出ている素敵な写真だと思うが,それは本意でなくテレビに度々登場されるご家族の立ち居振る舞いからも推し量ることができる。
そして,私自身親となった今,自分のこどもが突然目の前からいなくなったことを想像すると,それはもう想像を絶することに間違いない。そのような中から,問題解決に向けて立ち上がった被害者のご家族の方たちのことを思うと,胸が締め付けられるばかりだ。
むごい事件で被害者の写真が出るたびに,そのような形で顔を知られることの無い,普通の生活というものがいかに大事なのかを考える。
めぐみさんの本当の笑顔をこの目で見てみたい。