BSEが教えてくれること
先日,以前別の感染関連コンテンツのことで情報交換したことのあるブログ作者から,
に書かれているシンポジウム資料を送っていただいた。以下に目次を転載させてもらう。
- I シンポジウム論文
- II 論説
- III 転載(日畜士会報)
- IV パブリックコメント
- 牛の個体識別のための情報の管理及び伝達に関する特別措置法 施行規則の制定についての意見
国内のBSE牛の感染ルートは確定していないが,その可能性について詳細に論じられ,BSE調査報告書(2003/09/30)の問題点が鋭く指摘されている。
意思を持たない単なるタンパク質分子である異常プリオンが感染を引き起こしてしまうということが,なぜ今の時代に発生して広まってしまったのか,多くの疑問点を,
で生体分子の相互作用という視点も含めて追跡し続けており,このブログでも何回か言及しているが,送られた資料でいろいろなことを理解することができたと同時に新しい疑問・宿題も与えられた。
また,必ずしもその努力が正当に報われないとしても,真摯に問題に取り組んでいる研究者が多くいることを心強く感じる。その一方,私たちは多くのことを知らされていないのだけれど,今の時代はその気になりさえすればインターネットが多くのことを教えてくれることを再認識する(上記資料の多くが引用情報URLを記載していることからもわかる)。
まず教えられたのは,飼料・油脂その他の“商品”がいかに複雑怪奇に製造されているかという現代社会の現実である。冒頭の論文の『牛は動物性蛋白質を嫌う』に象徴されるように,生物の世界が長い長い時間をかけて築き上げてきた食のありようは,すっかり似て非なるものになってしまっていることに愕然とさせられる。科学的に見てその組成が似通っていても,個々の成分は世界中のどこでどのようにしてつくられたのかわからないものが混ぜ合わされて成り立っているのだ。異常プリオンが驚異的な難分解性物質であることを考えると,その動態がいったいどうなっているのか完全にはわからない以上,またいつどこで“商品”に紛れ込むかわかったものではないし,さらに新たな問題物質の誕生も懸念される。
炭素循環や窒素循環などという語に代表されるように,生体分子の部品を一旦はばらばらにしてから他の生物が利用するという基本的ルールが,効率という語のもとに誤ったバイパスルートが多数設けられることによって破壊されてしまっているように感じられるのは杞憂だろうか。
私たちは生命の世界のシステムをまだほんの少ししか理解し得ていないのだと,また改めて思う。