霜降り牛や中トロの受容体?

現在,5つの基本味とされるのは塩味,甘味,うま味,酸味,苦味で,このうちうま味は日本人が提唱して認知され,umamiが国際語になっていることは,拙著「動く分子事典」のp.74,p.160(辛味・渋味にも言及)にも記載した。
ところが,第6の味が提案されているというニュースが出た。

マウスを使った実験で,CD36というタンパク質が受容体ではないかということ。霜降り牛やマグロのトロが喜ばれる(価格が高い)のもこの受容体のせいかも知れない。
この件については,ちょうど先日読んだ以下の本にも最近の研究事情が記載されている。コクと旨味の秘密 (新潮新書)

      ※p.103『マウスは油脂に「やみつき」』,p.125『油の受容体』など。
同書ではいろいろな食品・飲料の“コク”が,三大栄養素の糖質(甘味と関係),タンパク質(うま味と関係),油のバランスが不可欠と繰り返し述べていて,この油と関係するのが今回の受容体による働きによるものではないかということになる。「やみつき」や執着という機構を知る上でもよい教材になる。
それにしてもこの本は著者も楽しみながら書いていることが感じられ,p.182『ネズミに日本文化を教える』など2005/10/19に書いた食育に関する示唆も多数示されている。p.128の『砂糖を感じる受容体』には七回膜貫通型タンパク質(2005/03/01など参照。ビジュアル生理学/味覚の『G蛋白共役受容体』のアニメにも登場)の話も出てくるので,あれこれ首肯しながら読むことができた。