米沢デジャビュと分子モデル


上に示したラファエロの「アテネの学堂」(1508-11,フレスコ;部分)の中心にいる2人はプラトンアリストテレスとされている。このほぼ500年前に描かれた絵を見ると,思い出すことがある。
30年近く前,修士論文を出した後に後輩の卒論実験の手伝いもこなし,新天地の津軽に向けてアパートで荷造りをしている時,ふと窓の外を見ると,白衣姿の2人の先生がアパートへの道を何か語りながら歩いてくるではないか。その光景が上の場面と重なって思い出されるのである。
HGS分子模型で分子の形に開眼させてくれたM先生と,群論やバドミントンを仕込んでくれたT先生である。『さては修論に重大なミスが見つかったか』と一瞬青くなったが,ノックしてドアを開ける早々,「本間君,今夜送別会をやろう!」と言うではないか。
学生時代は酒呑みで知られ,若手の先生方の飲み会の会場予約などもさせられたりしていたが,友人たちと溜まり場にしていたKという店で3人で飲もうという思いがけない提案であった。
その夜,3人でKに行き,座りなれたカウンター席でいろいろなことを話したのは最高の贅沢で,どこか夢を見ているような心地であった。そのことが窓から飛び込んできた2人の先生の姿とラファエロの絵をダブらせてくれるのだろう。
米沢ではM先生,T先生はじめ何人かの先生のご自宅へ仲間と押しかけ,蔵書を見せてもらったり研究以外の話も多々していただいた。それらは具体的なことは大部分忘れたとしても,今の私にとって財産になっていることは間違いない。
で,このところ取り組んでいる分子表示ツールJmolを利用した,

を作成したのを機に,当時使っていた色素分子の一つである C.I.Disperse Yellow 7 について,修論ロットリングで描いた構造式を画像ソフトで変形させたものとJmolによる画像をアニメにしたものである。この分子モデルをHGS分子模型ならぬ分子ソフトで組み立てたのもほぼ四半世紀ぶりということになるが,学生時代は想像さえしなかった仕事を現在している証といえる記念碑的(?)なアニメgifになる。