MRIで生きている脳を見る

ecochem2005-03-15

海外でも大きく取り上げられているアルツハイマー病の診断に関するニュース。アルツハイマー病は認知症の原因の多くを占めるもので,誰にでも起こりうることから,その診断・治療が急務となっている。

診断に用いるMRI(磁気共鳴画像,核磁気共鳴画像)は2005/02/21fMRIの基本的なもの。特定の原子核の磁気的性質を利用して情報を得る。2004/10/05で『自然界の4つの力』(重力,電磁気力,弱い力,強い力)のことを書いたが,化学では通常この中の電磁気力だけを考えればよく,電気と磁気は不可分というのが前提(電磁石は電気で磁石をつくれるし,発電タービンは永久磁石を動かして電気をつくる)。だから陽子と中性子からできている原子核でも磁気的特性を有していることになる。MRIに関連する研究で過去に何度もノーベル賞が与えられているが,2003年はその最近の例。

冒頭の理研のアナウンスでは,FSB(画像;Chimeがインストールしてあれば筆者が組み立てた分子モデルが参照できる)という特殊な化合物を合成してシグナル源としたことも詳しく書いている。
MRIfMRIは,病気の診断だけでなく例えば以下の記事のように様々な局面で利用されていくだろう。

これは遺伝子診断と同様で,DNAの二重らせん構造を発見したワトソンとクリックのうち,昨年死去したクリックが後年には脳の研究に打ち込んでいたことを考えると興味深いが,どちらもまだ複雑な生命システムの表層がわかり始めたに過ぎない。どのように活用していくかは,私たち一人一人が考えていかなければならないことだろう。