衣食足りて…(セルロースとグルコース)

ecochem2005-03-18

草や木を支えているのはセルロースというブドウ糖が長くつながった分子で紙や綿・麻繊維の主成分でもある。草食動物はおなかの中の微生物の力を借りて消化できるのに,人間はそうはいかない。ところがちょっと形が違うブドウ糖がつながったアミロース(デンプンの一種)はちゃんと栄養として利用できる。画像の部分構造で左が直線的なセルロースで,右がコイル状になりやすいアミロース。成分原子は同じなのに形が違うと利用できないのは,消化する酵素が決まったものしか相手にできないからというルールの一つの例。
セルロースは,
高校化学の教え方―暗記型から思考型へ

  • 日本化学会 編,「高校化学の教え方」,丸善(1997)

の14章が『地球上でもっとも多い有機分子D-グルコースの立体化学』となっているくらい地球上に豊富に存在するので(砂漠化していったら難しいけれど),これを人間が食べることができたら食糧問題も解決するかもしれない。
そんなところにビッグニュース。

グリコのページにも詳しく出ている。

後者の図3が上の画像と対応する。なお,アミロースが丸まりやすいことは末尾のページのシクロアミロースを見てもよくわかり,この構造が図5のヨウ素‐デンプン反応を示す原因になっている(ネットで調べてみるといいだろう)。アミロースセルロースそれぞれを構成するグルコースは,1ヶ所だけ-OH基とHの上下が違うだけなのに本当に分子は面白い。
この方法も天然の酵素の力を借りるわけで,コストなどいろいろな課題があるものの大きな前進には違いないだろう。