“持続可能”から“維持可能”へ
途中まで読んでいながら夏休み中に読み終わらず,明日の環境の講義を前に早朝起きて読了。
環境問題に配慮しながらも経済的な成長を続けようとする“Sustainable Development”は「持続可能な開発(発展)」と訳されるが,それは実に傲慢な発想であり,残された道は“Sustainable Society”つまり「維持可能な社会」(簡単にはp.202の“五つの人類の課題”を見ていただきたい)をいかに構築していくのかを考える以外にないことを思い知らされる。あるいは,現在すでに維持不可能な状況に陥ってしまっているではないかということに想いを致しつつ。
私自身が少しずつ学んできたように,まだ解決していない水俣病の教訓というものが活かされず,アスベスト問題を産み出してしまっている私たちの社会のありようや現実は,また同じことを引き起こす危険性を常に孕んでいる。助けを必要としている多くの人たちの存在というものが繰り返し軽んじられる異常さを,より多くの人たちに自分の問題として認識して欲しいと改めて思う。その上で,著者が示す処方箋例を手がかりに,自分の周りを眺め回すことこそ必要だと考える。
そして,水俣病に関するここ数日のニュースに目を通して欲しい。
- 水俣病:認定基準見直しは求めず 環境相懇談会(毎日,2006/09/01)
- 水俣病懇談会 提言まとめる 恒久的救済策求める(熊本日日,2006/09/01)
- 水俣病の未認定患者、全員救済求める…有識者懇報告書(読売,2006/09/01)
- 救済「政治決断で」 水俣病懇が12の提言 恒久的枠組み要求(西日本新聞,2006/09/02)
- 水俣病「新たな救済制度を」 懇談会提言 認定基準踏み込まず(北海道新聞,2006/09/02)
- 水俣病懇談会 『国が前面で救済』提言(東京新聞,2006/09/02)
- 「未認定者、救済策を」水俣病懇談会が最終提言(朝日,2006/09/02)
- 水俣病懇、柳田邦男委員ら無念 環境省と対立、玉砕覚悟(朝日,2006/09/02)
- 水俣病:懇談会提言 不透明な具体策=解説(毎日,2006/09/02)
- 「懇談会」最終提言 恒久的枠組みを 認定基準見直さず(熊本日日,2006/09/02)
- 水俣病:懇談会の提言、地元に波紋 関係者ら、根本的見直し訴え /熊本(Yahoo!ニュース,2006/09/03)
さらに,これも水俣病の情報であるが,今月30日に新潟市で新潟水俣病現地調査が催される。同書「あとがき」でも現場を見ないで環境問題を教えることの危険性が指摘されているが,せっかくの機会を利用していただけたらと思う。
2006新潟水俣病現地調査
- 日時 2006年9月30日(土)9:00〜17:00
- 集合時間・場所 8:50に総合生協中央支局前集合(新潟駅から徒歩数分);解散は新潟駅前
- 内容 被害者交流会(新潟市津島屋、豊栄、安田),旧昭和電工鹿瀬工場と阿賀野川流域の見学,県立環境と人間のふれあい館(新潟水俣病資料館)の見学
- 参加費 大人3,000円,学生1,000円(バス代、資料代)
- 備考 昼食・飲み物は各自持参
- 終了後,懇親交流会を予定。会費は3,500円程度
- 申込み・問い合わせ先 新潟水俣病共闘会議(TEL 025-281-2466,FAX 025-281-8101,niiheiwa@rapid.ocn.ne.jp)
- 参考:2004現地調査の記録