熱的バランスから見る熱中症と温暖化

暑い日が続き,連日熱中症のニュースが報じられている。2007/08/12で紹介した,

で語られるであろう内容とも関係するのだが,自動車も人間もエネルギー(ガソリンや栄養)が十分にあっても熱をうまく捨てられなければ動作せず,気温が体温に近づけば生物のシステムは破たんしてしまう危険があるのだ。
生物には必要なエネルギーを取得したり発熱するしたりする工夫(下図左側)と同じように,熱を捨てる様々な仕組み(下図右側)を築き上げてきている。そのバランスで恒温動物として体温を一定に保持しているのである。


この図は以下のページに掲載したものである。

図の左側には『糖類・脂質・タンパク質』とあり,この三大栄養素が生体の部品に利用されるだけでなくエネルギー源にもなっていることを思い出させてくれる。また,図右側の『伝導・対流・放射』は3種類の“熱の伝わり方”を示していて科学の基礎的な要素が詰まっているほか,『発汗』や水分補給の大切さも教えてくれる*2


上の資料に示されている“産熱と放熱のバランス”や“着衣の熱抵抗”の式,

を見ると,生物の熱的バランスというものが体表面積や体温などの身近な因子で記述されることがわかると同時に,“着衣”というものを例えばクールビズと絡めることで賢い衣生活というものを考えるきっかけにもなろう。

(本ブログもチーム員として参加)

ここで久々に上の式*3を1つ,「はてな」の数式表示機能(数式の表示参照)を久々に使って示してみよう。
    I_{cle}=\frac{5.55A(T_s - T_a)}{M-0.58E^\prime \pm 0.83W(2\Delta T_{re} + \Delta T_s) / 3}-I_a
そして,熱的バランスを地球規模で考えれば,温暖化というものがよく理解できる*4
以上のようなことを9月の「サイエンスカフェにいがた」でも知ってもらえるのではないかと期待している。そしてくれぐれもこの夏の暑さにはご注意を!

★お陰さまで第1回カフェ(2007/08/26)の申込みはは本日定員の40名に達しました!

*1:この2つの資料は,1995年の化学工学会新潟大会におけるシンポジウム「暮らしの中の化学工学」で講演したもので,大会の実行委員長だった新潟大学の伊東章先生(日本の草分け的Webサイト化学工学資料のページを主宰)からWebページ作成を勧められたてネットにデビューすることになったのである。

*2:『蒸発』は“打ち水”とも関係。

*3:以前はWordで書いて画像にして埋め込む方法をよく用いた。

*4:例えばやはり「はてな」の数式表示を使った2005/10/15参照。