今月発売のブルーバックスから

ブルーバックス今月の新刊の広告記事を見て昨日ジュンク堂新潟店に行ってゲット。
がんはなぜ生じるか―原因と発生のメカニズムを探る (ブルーバックス)
DVD&図解 見てわかるDNAのしくみ (ブルーバックス)

前者(以下「DNAのしくみ」)はDVD3枚組でDNAのはたらきをCGで見せてくれるぜいたくさ。ただし,ブルーバックスでDVDが付録になったのは新分子事典が最初だったのは強調しておきたい。動画についても機会があれば作りたいといつも思っているのだが,やはり多数のスタッフの協力が必要なのだと制作スタッフ一覧を見て再認識する。
ただ動画は説明音声もあってわかりやすいもののストーリーが決まっているので,該当生体高分子データを自由に動かしたり拡大したりできる新分子事典を以下の写真のように併用してもらえたらと思う。


〔PC画面左〕「見てわかるDNAのしくみ」で表示されるRNAポリメラーゼ
〔右〕新分子事典で表示したPDBデータ1i6h(2006年ノーベル化学賞参照)

ところで「DNAのしくみ」の著者のお二人はJT生命誌研究館の所属。中村桂子さんは,

にあるように以前は三菱化成生命科学研究所(現・三菱化学生命科学研究所)の所属で,その頃からのご活躍を拝見している。
上にあげたもう1冊のブルーバックス新刊「がんはなぜ生じるか」には,『タバコと肺がん』といった内容もあり,ちょっと不思議なラインアップにも見える。
こちらの本には染料工業やポリマー作業者に職業的ながんが多発しているのに正確な報告がなされていないとの指摘もある。
また発がん性化合物の発がんメカニズムについては福井謙一さんのフロンティア軌道論が有効でその際フリーラジカル生成を考慮することが重要とする著者の主張は計算化学の適用範囲の広さを教えてくれる。またフリーラジカル生成には代謝酵素P450(P450データ集参照)が関わっているとはいろいろな意味で因縁を感じる。


参考:発がん性分子ベンツピレン(ベンゾ[a]ピレン,benzo[a]pyrene)代謝物の
DNAへのインターカレーションの例
発がん性化合物と生体分子参照)