水俣病にこだわってPDB新データと関連DBに遭遇

ecochem2008-11-12

RCSB PDBの定例新規公開データチェックで気にかけている単語がいくつかあって,“mercury”のその1つ。
今日は,2007/09/23に記した有機水銀分解酵素MerBの構造を明らかにした研究チームによる複数のアルキル水銀リアーゼ(EC.4.99.1.2)の構造データが公開された。今回は前回のNMRデータではなくX線回折によるもので,Hg(II)イオンを含むものも複数あり,冒頭はその例の3f0pのA鎖である。
図で球棒モデルで示したCys96・Cys159・Cys160が活性部位とされるが,このデータではCys96・Cys159が水銀をつかまえていることがわかる。他に,Cys160がSerに置き換わった変異体C160Sのデータとして3f2hなども公開されている。
人間が引き起こした化学物質による環境問題は多々あるが,この例のようにその解決のために自然界にある生体分子のお世話になることが少なくない。そのことを教えてくれるデータベースの一例が以下になる。


持続可能型社会への貢献遺伝子データベース
より


アルキル水銀リアーゼ
関連データ
※同DBにおける“有機水銀 or アルキル水銀”検索結果も参照

このデータベースの名称にあるように,“持続可能”性を考える上でエネルギー問題だけでなく,化学物質とのつき合い方もより真摯に考え続ける必要がある。
そのことは,水俣病を引き起こした科学史的背景を書き記した以下の新刊を読んでも強く感じる。それにしても故意に環境を汚染し,取り返しのつかない影響を与えた人為の後始末をその自然界に頼らざるを得ないという事象の繰り返しはどうにもやり切れない。
メチル水銀を水俣湾に流す

*1:同書発刊に先立って著者の入口さんが出された案内メールが私のところにも届き,早くに発注して入手することができた。