セルロースのIR測定と分子振動(Jmol化の積み残し)

時々お世話になるブログの記事,

にコメントを付けたのだが,セロハンテープの本体は合成プラスチックではなく天然のセルロースをテープ状にした再生高分子であるという話題。
身近なものが何でできているのかを知るのは大事で,「分子の指紋」を知る一例が赤外線吸収スペクトル法(赤外分光法,IR)で,その分子の有する原子団の様々な振動による赤外線の吸収を測定することで本体の分子構造を知るというもの。逆にその振動が止まる時には赤外線を放出し,これが温室効果ガスによる温暖化の原因と目されているのである。


二酸化炭素の変角振動(Chimeによる静電ポテンシャル表示)

今の研究室ではIR測定ができないが,以前の職場でセロハンテープと米の炊飯時にできた膜(デンプンの薄膜)のIRを測定したデータをWebページにしてある(Chimeを使っているのでIEブラウザではエラーになる場合もあるのでご注意を)。

セルロースはβ-グルコースのポリマーでアミロースはα-グルコースのポリマーなので,構成原子団は同じであるためIRスペクトルはほとんど同じ。「分子の指紋」という意味をご理解いただけると思う。
ところで,同データを含む,

MOLDAの吉田さんと一緒に取り組んだ大きな仕事なのに,Jmol化したのは,

だけで変換作業は滞ったままである。振動アニメーションをコントロールするJmolスクリプトがまだよく理解できていない面があるせいもあるのだが,大きな宿題である。
IRと言えば,先日mixiで階段から転げ落ちても壊れない携行型FT-IRのことが話題になっていた。

FT-IRなんて今の環境では高嶺の花だしいつの間にか携行型も売られているようで隔世の感がある。セロハンテープのIRの紙のチャートなんて今は博物館ものなんですよね。