「分子のかたち展」に寄せて(3) 多重結合の表示

2008/07/25に記したようにPDBデータの多くで水素分子や多重結合が表示できないことのデメリットが,二重結合と単結合が繰り返される共役系の認識ができないことである*1。ある分子が有色になるにはいくつかの要件があるが,その代表例が長い共役系をもつことで(これは導電性高分子においても重要),以下がその例になる。


共役系を含む分子の表示方式の違い
〔左〕ニンジンやカボチャの色素β-カロテン(モノはなぜ見える参照)
〔右〕メチルレッド(pH指示薬,酸性染料;染料の種類参照)
※画像クリックで分子表示ページへ


β-カロテンとメチルレッドに見る共役系

分子の研究者の多くは,多重結合が示されないスティック表示でも共役系の有無を見極めているのかも知れない。
 
〔左〕β-カロテンを含むPDBsumデータ2e75より
〔右〕メチルレッドを含むPDBsumデータ2v9cより(SITEにはアミノ酸以外にフラビンモノヌクレオチド含む)
PDBsumのLigand-SITE情報と有機性・無機性でJmol版分子モデル参照可

なお「分子のかたち展」は夏休みの入って分子だらけの展示の中をこども達が自在に動き回っているらしい。
たまたま今日のニュースで知った新しいイベント広報サイトにも同展の案内が出ていて見に行きたい気持ちが逸るばかりである。


※右下の4件は筆者が登録したサイエンスアゴラ2008水俣・新潟展など

*1:もちろんアミノ酸・タンパク質や核酸のデータを見る場合にも二重結合が表示されていないことを意識する必要がある。